会長挨拶

昨秋広島修道大学で開かれた本学会の第19回総会で、はからずも新会長に選出されました。

私は1990年に本学会が大来佐武郎さんや広野良吉さんのイニシアチブで発足した際の創立会員ですが、もう創立会員もごく少数になってしまいましたので、次の世代へのバトンタッチをきちんとやりなさいという天の声と受け止めて、豊田利久前会長の下で着実に発展してきた本学会の路線を踏襲しつつ、理事や会員の皆さまのご協力を得て、本学会の次世代への引継ぎに全力を尽くしていく所存です。

本学会の良き伝統としては、発足時の事情からして実務と理論のかけ橋を作るという役割があります。 1980年代に日本のODAが倍々ゲームで増えていた時代にいかなるODAか、いかなる援助協力か、という関心が強まってきて、研究者、実務家、ジャーナリストらが集まって、本学会が結成されました。従ってその当初から本学会では、国際開発の実務上で突き当たり、必ずしも理論化が出来ていない、つまり解決のめどが立たないような問題をどう理論化して答えを見出すか、また、理論の領域での仮説をどう現実の場で検証するか、という関心が強かったと思います。

このような理論と現実のフィードバックから、理論の深化が実務を助け、実務の進展が理論化を進めるという良性循環が期待されていたわけです。これは本学会が、理論のための理論に閉じこもりがちな多くの学会と大きく異なる点で、学際性、実証性、理論性の三本足の鼎の上に開発学が成立っていると考えます。

私たちは引き続き、このような開発学の特色に留意しつつ、グローバル化世界の流れを踏まえながら、日本の経験を生かしたような開発学の構築、発展に努力していく所存です。第二に本学会の大きな特色は、院生、若い研究者の養成に力を注いできたことで、その当初から院生部会を設け、学会の場で、若い研究者たちの切磋琢磨が絶えず行われてきました。
院生諸君が伸び伸びと自分のテーマを学会の場で発表し、先学研究者たちのコメントや忠言を得つつ、学問的問題関心を深め、表現・発表技術を磨いてきたことは、本学会の大きな誇りです。学会賞に奨励賞を設け、若手の研究者のすぐれた仕事を発掘、顕彰してきたことも、本学会の大きな功績と思います。世代や分野を越えた知的コミュニティの形成は本学会の卓越した伝統と認識しています。

これからは更にポスターセッションの充実、院生や若手研究者の国際交流にも学会が援助する仕組みを作っていってはどうかと思っています。若手の会員の皆さんも、学会発表、機関誌への投稿を大いに積極的に行ってください。

さて、2010年は本学会の記念すべき20周年にあたります。
今まで、10周年事業としては講座「国際開発」5卷が刊行され、そこから更に日本の開発学を世界に発信することを意図した英文書の企画(2009年度に発行の予定)も進められました。JICA等実務機関との共催のシンポジウムも折々開いてきました。20周年にあたっては、日本の開発学の来し方を振り返り、世界の中での日本の開発学の存在意義を確固とするような企画を立てていってはどうかと考えています。

会員、理事の皆さまのお知恵を借りながら、20周年に有意義なイベントを組み、3度目の10年期における本学会の一層の発展・飛躍に備えたいと考えております。会員の皆さまのご参加、ご協力宜しくお願いします。